カビが生える大きな要因は温度、水分、栄養、酸素、pHにあります。これらの条件を知っておくと、掃除をするときや食品を保存するときに勘がよくなります。家事のコツをつかむことに繋がるので、特に主婦の方や、家・食材の管理をされている方に役立ちます。
もくじ
温度
カビは種類によって最適な温度が違う
カビは酵素の働きによって養分を取り入れることができるのですが、温度によってどれだけ活発になるかが違ってきます。酵素の種類は多く、その最適温度も様々です。そのため、種類によって生育に最適な温度というのも違ってきます。下の表は真菌の増殖温度域を簡単に分類したものです。
注意として、低温域では生育が遅くなるだけで死滅はしません。
住居では温度調整だけでカビ対策はできない
この表から分かることは、全種類のカビを増殖させないためには、温度を-12.5℃以下か61℃以上にしなければならないことです。ある程度は仕方ないと最適温度だけを外したとしても5℃以下か53℃以上ということになります。冬場の物置なら5℃以下は達成できそうです。
しかし、人にとって快適な室温は20℃前後ですから、夏でも冬でもエアコンなどを使ってこの温度に近づけようとします。すると高温性菌以外は見事に最適生育温度に当ってしまいます。なので住居の場合、温度調整だけでカビを生えてこなくするというのは現実的ではありません。
食品の冷凍保存も過信は禁物
食品などを冷凍保存してもカビが生えてくることがあります。一般家庭用の冷凍庫の温度は-18℃以下なのですが、扉を開けているときに暖かい空気が入ったり、室温ほどの物を新たに入れていくときに庫内の温度が上がります。このときに徐々に増殖していくので、冷凍庫も過信はできません。
熱湯を使った殺菌
カビは細菌に比べると熱に弱く、耐性の強いものでも100℃では死滅します。ただ、どれだけその温度に晒しておけばいいのかというのは、これも種類によって幅が大きく、全種をカバーしようとする場合には3分~1000分とされています。
また、カビが作りだした毒素は100℃程度では分解できない物が多いので、カビが生えた食品は十分に加熱しても食べてはいけません。
次のテーマにもなりますが、お湯を使った後に残る水分も問題ですね。きれいにしたい対象物と、空気中が水分でいっぱいになりますから、なんらかの方法で除去しなければなりません。
水分
自由水を利用して養分を取り入れる
好乾性と言って、乾いた環境が好きなカビもいますが、ほとんどは湿度の高い環境を好みます。これはなぜかというと、カビは養分を体外で水に溶かしてから取り入れるからです。
このとき利用できる水は自由水と呼ばれるもので、カビが取り付いた対象の全ての水分を利用できるわけではありません。自由水とは一言で言えば余分な水で、結露水がその最たるものです。
結合水は利用できない
これとは反対に結合水というものがあります。これは物体の分子や細胞がガッチリと保持している水です。例えば木材の場合ですと、木の繊維細胞が保持している水です。まわりの水分が多くなってくると木がどんどんそれを吸収してしまうわけですが、繊維細胞が保持できなくなった分は自由水となります。
そのため、湿度を高くしないことや結露水を出さないことは、カビを生やさないうえで重要な対策になります。
栄養源
カビはタンパク質、アミノ酸、炭水化物、脂肪、無機塩類などでできています。植物のように光合成はできないので、これらの材料を直接取り入れる必要があります。
有機物が主な栄養源となり、まわりに無機物だけしかないという環境では育ちにくいです。ただ、人や動物から出るフケや垢、空気中を漂うチリなどが格好の餌になりますので、普通に生活する場所ではカビの栄養源がなくなることはまずありません。
もちろん掃除によって、できるだけ餌となるものを少なくすることは有効です。きちんと清潔を保っていれば、それだけカビの成長は遅くなります。
酸素
増殖するのに必要な酸素濃度がある
例外もありますが、ほとんどのカビは好気性菌、つまり酸素を必要とします。空気中の酸素濃度の1/4~1/8の濃度でも生育できますが、それより大きく下回ると僅かな種類の菌しか生育できません。
表面ではなく、液体中にカビが生えているのを見たことはありませんよね。その理由の一つは液体に溶けている酸素量が少ないことにあります。大気中の酸素濃度が約21%なのに比べて、水中での濃度は約0.001%(水温20℃で溶けている酸素は飽和状態として)と、ごく僅かしかありません。カビにとって水が重要なものであることは上記の通りですが、逆にまわりが水だけという環境でも上手く生育することはできません。
酸素濃度を利用したカビ防止対策
液体を一分の隙もなく充填したり、減圧器を使って真空パックするという方法、酸素除去剤の使用は食品には有効です。ただ、液体を充填する方法は気泡が入ってしまいやすいことが難点です。減圧する方法は専用の機具が必要で、容器も口がしっかり密閉できるものでないと意味がありません。酸素除去剤は同じく、容器が密閉できるものであれば酸素濃度を0.1%ほどに下げられますが、紙包装紙などの酸素を通してしまう素材を使うと用をなしません。
嫌気性の、酸素を必要としないカビもいますから、万全というわけでもありません。実際、缶詰や密閉した化粧品からもカビが生えることがあります。
pH(水素イオン濃度)
カビ全般を見ると、生育できるpHの幅は1.5~11です。たいていは弱酸性を好み、アルカリ性には弱いです。アルカリ側の限界値は8~9であるものが多く、pH11でも生育できるものは体外に有機酸を分泌して都合のいい環境にしていたりします。このため市販のカビ取り剤のほとんどはアルカリ性です。
その他カビが苦手な環境
日当たりが良いところ
カビは紫外線に弱く、日の当たる場所では生育できません。そのため建造物では北側でカビ被害が起こることが多いです。
硬い場所
カビは取り付いた場所に、根のように菌糸を伸ばしていきます。硬い場所では菌糸を伸ばすことが難しくなります。
なめらかな場所、自然や人によって清掃される場所
カビは何らかに取り付かなければ栄養を得ることはできません。なめらかな場所はとっかかりがなく、すぐどこかに移動してしまうことになります。清掃される場所も同じ理由でカビが生えにくくなります。
成長を邪魔するものがあるところ
例えば防カビ剤ですが、これが十分に塗布されたような場所です。